パンの4大材料 どんなパンでも基本的な材料は4つ
今の時代、パンには数多くの種類があり、様々な形で楽しめ、好みも色々と分かれると思いますが、パンの種類がどれだけ増えても共通している材料があります。
それは・・・
①小麦粉
②酵母
③塩
④水
です。
①小麦粉は、畑で実った小麦から製粉されます。パンのほかにも麺類などにも使われるものです。味と食感を決める主役となります。
②酵母は、糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する菌のことをいい、パンをふくらませるために必要不可欠なもの。イーストや天然酵母として入手できるほか、穀物・植物などから自家製酵母として培養されているところもあります。
③塩は、生地の中に多くても2%程度しかありませんが、パンの味付けのほかに、酵母の働きを促進させ、生地のコシを強くする役割があります。
④水は、パン生地をまとめ、こねるために加えるものです。日本ではほとんど軟水を使用しますが、欧州ではミネラル分を多く含む硬水がメインです。硬度の違いで仕上がりや食感は全く変わってきます。
そして、それらを加える量、加える割合、それぞれの何を加えていくかによって、全くタイプの異なるパンが出来上がるということですね。
ここでは、よりパンを深く楽しめるために、それぞれの材料がパンにどのような効果を与えているのかを書いていきたいと思います。
①小麦粉
小麦粉は、約70%の炭水化物と、6~15%程度のたんぱく質がメインで構成されています。
その割合や製粉方法が変化することで、6種類ないし7種類の小麦粉に分類されており、何を作るかによって適した小麦粉が使用されています。
強力粉
強力粉は、小麦粉の種類の中でもっともたんぱく質の割合が多い粉で、その含有量が全体の12%以上の小麦粉のことを強力粉と呼んでいます。
パン作りに一番使われている粉で、ふわふわふっくら最強力粉、しっとりふんわり強力粉、外はパリッと中はモチっと仕上がりやすい準強力粉があります。
薄力粉
薄力粉は、たんぱく質の量が8.5%以下の粉です。一般に、たんぱく質が少ないほどさっくりとした仕上がりになります。
小麦粉の用途も多いのがこの薄力粉で、パンの場合は菓子パンやハード系など歯切れのいいタイプのパンを作る際に、強力粉と混ぜて使うことが多いです。
中力粉
強力粉と薄力粉のちょうど中間の性質をもつ粉が中力粉です。たんぱく質の割合は9%前後となっています。
焼き上がりのボリューム感が欠ける感じになりますが、小麦本来の味わいを楽しめるキメの細かい仕上がりとなるのが中力粉です。
薄力粉と並んで用途が多く、主に麺類やお菓子などでも使われます。
全粒粉
全粒粉は、小麦の表皮や胚芽、胚乳などすべてを製粉したもの。すべてが含まれているため茶褐色の仕上がりになるのが特徴です。お米であれば、胚芽米が近いでしょうか。粒子が粗いものは、ざくざくとした食感になります。
また、グラハム粉も全粒粉の一つとされる方もおり、その場合は小麦粉の種類は6種類となります。
ライ麦粉
ライ麦粉は、食物繊維や鉄分などが豊富に含まれ、パン作りには強力粉を10~30%程度混ぜて使うケースが多くなっています。
どっしりパンの多いドイツパンには欠かせない粉で、独特の豊かな風味と甘みを持つ粉です。
セモリナ粉
セモリナ粉は、強力粉や薄力粉よりも粒子が粗い粉のことをいい、ふるいにかけられた粉のため、粒子がとても細かいものとなります。
主にデュアルコムギから作られるため、粉の色は黄色系に寄るところや、強力粉よりもたんぱく質が豊富なところが特徴です。
パン作りには適しておらず、パスタやシリアル、プリンなどで使用されます。
精白米を粉砕して粉にしたものなので厳密には小麦粉ではありませんが、パン作りにも活かせる材料で、モチモチ食感の香ばしいパンに仕上がります。
製パンには、市販もされているグルテンや小麦粉が添加されたものが使用されます。
②酵母
酵母は、パンを発酵させ、ふくらませる役割のある材料ですが、すなわち「菌」ですので、そこには無数ともいっていい原材料が存在しています。
酵母は、原材料と培養方法で大きく3つの種類に分けられています。
イースト
酵母とイーストはほぼ同じ意味で、分類学上では「サッカロマイセス・セレビシエ」という菌です。パン用の酵母を抽出し、純粋培養したものをいいます。
安定した発酵力を持つのが特徴で、酵母自体は自然界に由来しています。
生イーストを顆粒状にしたもので、水で戻す必要があります。
インスタントドライイーストというドライイーストは生地に直接加えていきます。
○生イースト
パン用の酵母を純粋培養し、圧縮したものです。
ドライイーストの代わりに使用する場合は3倍の量が必要とされます。砂糖を多く含む生地に最適とされています。
天然酵母は、添加物を加えて発行するイーストと区別するために分類されています。発酵には時間がかかりますが、何由来かによって個性的な風味に変化させていきます。
野生酵母
野生酵母は、自家製酵母とも呼ばれ、穀物や野菜、果物由来の菌を培養したものです。時間と手間はかかりますが、素材由来の風味が楽しめます。
○穀物系
米や小麦、ライ麦などの穀物から起こす酵母。ハード系などの食事パンに最適とされています。小麦の味をしっかりと引き立てさせてくれるのが特徴です。
○野菜系
トマトやタマネギなどの野菜から起こす酵母。糖度の高い季節の野菜を使うと発酵力が高い酵母になるとされています。
○フルーツ系
乾燥レーズンや果物から起こす酵母。糖度の高い季節の果物を使うと発酵力の高い酵母になるとされています。洋ナシや巨峰などがよく使われています。
③塩
塩は基本、全体の1.5%、多くても全体の2%しか加えられませんが、味付けだけでなく、酵母の発酵を助け、生地のコシを強くする役割があります。
全粒粉やライ麦粉はグルテンを形成しないため、塩を入れないと生地がだらけてしまい、その他のパンに対しても、味気のないぼそぼそとした出来栄えになってしまいます。
塩を加える量は、どのようなパンを作るかによって変わってきます。
食パンは、バターをぬって食べる機会が多いため、塩分は控えめ。全体の1.5%の量が粉のうまみとバターの味わいが十分に活きるとされています。
その他、ハード系は1.5~1.8%、ベーグルは1.5~2.0%、フォカッチャは2.0%が適した量です。
また、海水からとれる塩は原料や製法によって4つの種類に分類され、陸上からとれる塩には岩塩があります。パッケージの裏面に製法が記載されているのが基本です。
天日海塩
釜焚き塩
これらは、海水塩を天日で乾かした天日濃縮といわれる塩で、天日だけで塩にする製法で作られた塩を天日海塩、塩田で海水を濃縮し、釜で焚いて結晶化させた塩を釜焚き塩といいます。
天日海塩には、海の晶ほししお、ゲランドの塩などがあり、釜焚き塩には海の精あらしおなどがあります。
再製加工塩
オーストラリアやメキシコなどの海水からつくられた天日塩を輸入し、一度溶かしてから、にがりなどのミネラル分を添加して再結晶化させています。
再製加工塩には、赤穂の天塩、伯方の塩などがあります。
イオン膜濃縮塩
海水をイオン交換膜製法と呼ばれる方法で濃縮して濃い塩水をつくり、そのあと釜などで煮詰めて結晶化させています。こうすることでナトリウムの純度が高くなり、刺激的な辛みが強まります。
イオン膜濃縮塩には、瀬戸のほんじおなどがあります。
岩塩
地殻変動で海底が隆起するなどして陸上に海水が閉じ込められ、そのあと蒸発し、長い時間をかけて濃縮、結晶化してできた塩のことをいいます。
岩塩には、アルプス山脈のふもとでとれるアルペンザルツなどがあります。
④水
水は、小麦粉、酵母、塩がパン生地となるために不可欠なものであることは言うまでもありませんが、加える水の性質によって仕上がりがかなり変わってきます。
硬度の高い水の中に含まれているカルシウムは、発酵している生地にうまみをうまみを持たせる性質があり、マグネシウムには保水効果があるため、生地がパサつきにくくなります。
また、水の硬度が高いほど、粉と水がゆっくりと浸透するため、低温長時間熟成が必要なパンに向いています。
一方、牛乳や卵、砂糖を入れて生地をふんわりさせたい時は、個性が少なく硬度が低い軟水がベストとされています。
基本的に、酵母が活性化する水温は27℃前後です。その中から発酵時間が短めである食パンは26~27℃、低温長時間発酵のフランスパンは22℃、クロワッサンやデニッシュは20℃でこね上げます。
また、水の硬度は、やわらかふわふわの食パンが36~60、バタールやカンパーニュで100~300、ドイツパンのサワードゥは300~600、バゲットでは1000が目安です。
なお、軟水に分類される水の例としては、南アルプス天然水(硬度30)、天然潤水(同36)、クリスタルカイザー(同38)、ボルヴィック(同60)、
中硬水に分類される水の例としては、エビアン(硬度304)、ヴィッテル(同315)、ウィローウォーター(同342)、
硬水に分類される水の例としては、カルヴァニーナ(硬度420)、コントレックス(同1468)、クールマイヨール(同1612)が挙げられます。
硬度の数値の範囲は幅広く、実際に口にしてみると、口の中での感覚や、のど越しの違いも明瞭なので、パンの出来上がりにも差が生まれるのは分かりますね。
ただ、硬水でお通じが滞ってしまう体質の方は、あまり飲み比べするのはおすすめできないかもしれません。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
この基礎知識によって、パンとの触れ合いが濃くなり、楽しみが増えたら幸いです。
参考資料:
パンの基礎知識 枻(えい)出版社
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